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項羽と劉邦の鴻門之会に見る勝負の分かれ道「解説」

秦の始皇帝失脚後の後継ぎ争い

漫画「キングダム」はまさに中国を統一する秦の始皇帝の話だけど、秦の始皇帝失脚後の後継ぎ争いもまた面白い。そもそも秦は、史上初の中国統一ということで歴史の教科書でも良く出てくる。秦の始皇帝(嬴政)は、万里の長城や貨幣を作るなど奇抜な政策を行っていたことで有名。

後継ぎ争いで楚が立ち上がる

後継ぎ争いに名を上げたのが「項羽(こうう)」と「劉邦(りゅうほう)」。項羽は、覇王と言われており、戦場では連戦連勝で文句の付け所が無かった。しかし、捕虜を虐殺したりするなどの悪行が目立った。一方の、劉邦項羽とは真逆の性格。人心掌握に長けていた劉邦は、有能な人材が多く集まった。

秦の首都咸陽に早く辿り着いたものが王となる

項羽と劉邦は楚の国を出発し、北に項羽、南に劉邦が進路を取り、先に秦国の首都「咸陽」の中(関中)に入れば後継ぎ争いを制して王となることになった。

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項羽のルート

負け戦が1つも無いほど大将軍だった項羽は戦には強かったが、秦兵20万の虐殺など城を落とすたびに住民を殺したことが幾度もあった。そんな項羽に対して秦は激しく抵抗したため時間がかかった。

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劉邦のルート

無駄な戦をしない劉邦は、死者をあまり出さず、「戦わずして勝つ戦法」により秦軍を降伏させたことで時間をかけずに目的地である咸陽一番乗りを果たす。しかし…

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鴻門之会

先に咸陽に入った劉邦に激怒した項羽は、劉邦を殺すことを決意。そこで開かれたのが「鴻門之会(こうもんのかい)」という表向きの密会であった。劉邦はもちろん天下統一のために項羽を倒さなければならなかったけど、項羽を殺すと悟られると自分が殺されてしまう。項羽も大胆に劉邦を殺すとなると殺した後に大反対が起きる。そんな究極の心理戦の中行われた鴻門之会がめちゃ面白い。

現代語訳

劉邦は翌朝、百余騎を従えて、項羽にお目にかかろうと鴻門に来て、陳謝して次のように言った。
私(劉邦)は項羽しょうぐんと力を合わせて秦を攻めました。項羽将軍は河北で戦い、私は河南で戦いました。しかしながら、思いもしなかったことです。自分がまず関中に入り秦を破って、再びここで将軍にお目にかかるとは。近ごろ、つまらない人間があることを言いましたが、それは項羽将軍に私との仲違いをさせようとしているのです。

すると項羽は言った。

それは、劉邦殿の左司馬・曹無傷が言ったことである。そうでなければ、私はどうして、このように怒るようなことになろうか。

項羽はその日、そのまま劉邦を留め、ともに宴を開いた。項羽と項伯は東に向いて座り、亜父は南に向いて座った。亜父とは范増のことである。劉邦は北に向いて座り、張良は西に向き(劉邦のそばに)控えて座った。范増は何度も項羽に目配せし、身に付けている玉玦を持ち挙げて、(劉邦を殺すよう)示すこと数回に及んだ。
しかし、項羽は黙ったままで応じない。范増は座を立ち外に出て、項荘を呼びよせて、こう言った。

項羽は残忍なことができない人柄だ。そこで、そなたは宴席に入り、進んで寿を祝え。寿を祝い終えたら、剣舞を願い出て、剣舞にことよせて、劉邦を襲い宴席で殺してしまえ。そうしないと、そなたの一族はみな劉邦に生けどりとなり捕らわれの身となってしまうだろう。

荘はすぐさま宴席に入り、寿を祝った。祝い終わって言うには

項羽将軍は劉邦殿と宴をともにしています。しかし軍中であり、余興がありません。どうか剣舞をさせていただきたく存じます。

よし。(項羽

項荘は剣を抜いて立ち上がり舞った。項伯もまた剣を抜き立ち上がって舞い、常に自分の体で(項荘の攻撃から)劉邦を守った。荘は(劉邦を)襲うことができなかった。そこで張良は軍門に行き、樊噲と会った。

今日の様子はどうなっていますか。(樊噲)

大変に事態が切迫している。今、項荘が剣を抜いて舞っている。
その狙いは劉邦を殺すことにある。(張良

それは事態が切迫している。どうか宴席に入って劉邦と命をともにさせていただきたい。樊噲)

樊噲はすぐに剣をおび盾を構えて軍門に入った。
軍門を守備する兵士は、止めて中に入らせまいとした。
しかし、樊噲は持っていた盾を傾け、守備する兵士を突いた。すると兵士は地面に倒れた。樊噲はそのまま中に入った。幕を開き西向きに立ち、目を大きく開いて項羽を見る。頭髪は逆立ち、まなじりは完全に裂けている。
項羽は剣に手をかけ、片膝を立て身構えて言った。

そちは何者だ。(項羽

劉邦殿の同乗者、樊噲である。(張良

壮士である。大杯の酒を差し上げよ。(項羽

すぐさま大杯の酒が与えられる。樊噲は慎んで礼を言うと立ち上がり、立ったまま飲んだ。

豚の肩肉を差し上げよ。(項羽

すぐに一塊の生の肩肉が与えられた。樊噲は盾を地面の上にひっくり返し、肩肉をその上にのせ、剣を抜いてむさぼり食った。

壮士である。まだ飲めるか。(項羽

私は死すら避けようとは致しません。大杯の酒くらい、どうして断りましょうか。そもそも、秦王には虎狼の心がありました。人を殺すこと、数え上げることができません。人に刑罰を加えること、不十分であるのを恐れたほどです。だから、天下は皆そむいてしまったのです。懐王は諸将と約束して『先に秦を破って咸陽に入った者を王としよう』と言いました。今、劉邦殿は先に秦を破り咸陽に入りましたが、わずかほどもみだりに自分に近づけようとはしていません。宮室を封印し、軍を覇上に返して、大王のお出ましを待っているのです。ですから、将兵を派遣して函谷関を守らせているのは、盗賊の出入りと非常事態に備えてのことなのです。劉邦殿が苦労し功績が大きいことはこのようですのに、まだ侯に封じるとの恩賞がありません。そうであるのに、大王は小人の話を聞き、功ある人を罰しようとしています。これは滅びた秦の後継としか言えません。恐れながら申し上げますが、大王のために取らないところであります。(樊噲)

項羽は返答せず、こう言った。

座れよ。(項羽

樊噲は良の隣に座った。
座って少しすると、劉邦は立ち上がり廁へ行った。そうして樊噲を招き外へ出た。

劉邦はすでに外へ出た。項羽は都尉・陳平に劉邦を呼びに行かせた。

今、退出するとき、挨拶をしなかった。どうしたらいいだろうか。(劉邦

大行は細謹を顧みず、大礼は小譲を辞せず、と申します。今、項王たちは刀と俎であり、我が方は魚肉も同然です。どうして挨拶など必要でしょう。樊噲

そこで、そのまま立ち去った。そして張良に留まらせて謝罪させることにした。
張良が問う。

大王はおいでになるとき、何を持参されましたか。(張良

私は一対の白色の環状の玉を項羽に、一対の玉のひしゃくを亜父に献上したかったが、項羽の怒りに会い献上できなかった。貴公は私のために献上してくれまいか。(劉邦

謹しんで承知致しました。(張良

この時、項羽の軍は鴻門の近くにあり、劉邦の軍は覇上にあった。
ふたつの軍は約十六キロ離れている。劉邦はすぐさま従えてきた車騎を留め置き、ひとり抜けだして馬に乗り、樊噲、夏侯嬰、靳彊、紀信ら四人は、剣と盾とを持ち徒歩で従い、酈山のふもとから、芷陽(覇上のこと)へと抜け道を通って行った。
劉邦張良に言う。

この道から我が軍までは、二十里に満たないほどだ。わしが軍中に入ったころを見計らって、貴公は中(宴席)に入るように。(劉邦

劉邦はこうして去り、しばらくして軍中に到着した。
張良は宴席に入って謝罪して次のように言った。

劉邦殿は酒の飲み過ぎに耐えきれず、退席の挨拶もできませんでした。謹しんでこの良に命じて一対の白璧を奉り、再拝して項羽大王の足下まで献上させ、一対の玉斗を再拝して大将軍(范増)の足下まで献上させたのです。(張良

劉邦はどこにいるのだ。(項羽

大王におかれてましては、劉邦の過失をとがめる意志がおありと聞き及び、逃れてひとりで去りました。すでに軍中に到着したでしょう。(張良

項羽は璧を受け取り、坐の上に置いた。亜父は玉斗を受け取ると地面に置いて、剣を抜くと勢いよく突き壊して言った。

ああ、青二才め。一緒に謀りごとはできない。我が仲間は今に彼のとりことなるだろう。(亜父)

劉邦は軍中に到着すると、すぐさま曹無傷をその罪により処刑した。

 

劉邦が初代漢の皇帝に

究極の心理戦を制した劉邦は漢の初代皇帝となり、後に約400年続く大帝国を築き、現在の中国の礎を築いた。もちろん、漢文、漢字、漢方、漢語など漢がいかに中国史にとって重要であるかがわかります。そのきっかけとなった鴻門之会を是非しっていただくことで、学ぶべきものはたくさんあるのではないでしょうか。

詳しくはNHK講座をご覧ください

NHK高校講座 | 古典 | 第43回 項羽と劉邦 鴻門之会 (1) 〜項羽、大いに怒る〜

www.nhk.or.jp

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